杉並区公式ホームページ > 区政情報 > 広報・広聴 > 広報 > もっと知る すぎなみ > スポーツ・文化の一覧 > 東京工芸大学 杉並アニメーションミュージアム館長 吉田 力雄

印刷

ここから本文です。

ページID : 21382

更新日 : 2025年6月15日

もっと知る すぎなみ

特集記事

表紙2025年6月15日

スポーツ・文化

東京工芸大学 杉並アニメーションミュージアム館長 吉田 力雄

日本のアニメを発信し続けて20年。
世界中の人々にも愛されている日本のアニメ。それらアニメ作品を手掛ける制作会社が多く集まる「アニメのまち杉並」には、杉並アニメーションミュージアムがあります。アニメーションミュージアムは今年で開館20周年を迎えました。今回は館長・吉田力雄さんに、同館やアニメの魅力などを語っていただきました。

目次

世界に誇れるアニメーションのミュージアムが、杉並にあるのはすごいことです

プロフィール:吉田 力雄(よしだ・りきお)
昭和29年千葉県生まれ。日本大学芸術学部放送学科卒業後、昭和53年にアニメーション制作会社、東京ムービー(現・トムス・エンタテインメント)に入社。制作としてテレビシリーズ「新・巨人の星」「ルパン三世 カリオストロの城」など数々の作品を担当。海外共同制作事業やライセンス事業を担当する傍ら、劇場版作品の制作委員会に参加するなどさまざまな形でアニメに携わる。同社退職後、令和3年4月より東京工芸大学 杉並アニメーションミュージアム館長を務める。
(杉並アニメーションミュージアムは、平成30年9月より東京工芸大学とネーミングライツ協定を締結しています。)

大学で映像制作を学び、アニメーションの世界へ

映像の世界に進まれたのはどんな理由からだったのですか?

千葉県生まれで、実家は建築業。高校卒業後は建築関係に就こうと考えていたけれど、大学へ進学することにしました。では何を学ぼうかと考えた際、CMに興味があったことから、映像・メディア関係の勉強をしようと日本大学芸術学部放送学科へ。大学の卒論のタイトルは「見えない世界」。映像をつくり出すことで初めて見えてくる世界があるということを説きましたが、今考えればアニメーションの表現のことを書いていたようにも思います。

就職先にアニメーション制作会社を選んだのはなぜですか?

当初は広告代理店を目指しましたが、業界につてがない中ではなかなか難しくて。それならば作品づくりからこの世界に入ってみようと、映像制作の会社も視野に入れて探す中、見つけたのが杉並区成田東にあった、アニメーション制作会社「東京ムービー(現・トムス・エンタテインメント)」でした。

当時自宅から近い所にあり、ノーネクタイでよいのも気に入って、昭和53年4月に新卒で入社。アニメ界では「未来少年コナン」がスタートした年です。当時の東京ムービーは住宅だった建物を社屋に使っていて、制作室には床の間がありましたね。愛車の屋根にサーフボードを積んで、アロハシャツにビーチサンダルといういでたちで出社していたのは、懐かしい思い出です。

東京ムービー入社2年目の吉田さん

アニメーション制作に情熱を注いだ会社員時代

東京ムービーで吉田さんが担当したのはどんな仕事ですか?

僕は制作担当で、初めて担当したのはテレビシリーズ「新・巨人の星」。制作の役割は基本的に、原画・動画・セル画・背景などの素材を各スタジオから集めてそろえ、それらを撮影し、現像・編集・初号と完成させること。当時はまだフィルムでしたから、こうした流れで制作していました。会社の規模が今ほど大きくなかったので、多くの作品を抱える中でとにかくスケジュールに間に合わせるために、総務・経理・常務までもがセル画に色を塗ったりしました。全社一丸となって作品に取り組んだ思い出です。

多くの作品を手掛けた中で、特に印象深い作品は何ですか?

宮﨑駿監督「ルパン三世 カリオストロの城」は、アニメの制作人生を振り返る中で、やはり忘れがたい作品の一つです。作品の面白さに入り込んで創っているという意識が非常に強く、スケジュールが迫る中ほとんど会社に泊まり込んでいたように思います。昭和54年の公開から45年以上経てもまったく色あせない。評価も変わらない。アニメは歳をとらないと言いますがそういう作品はやっぱりすごいなと思います。同作については、その後のリマスター作業にも携わりました。現在テレビなどで放映されている映像では、公開当初には見えなかった細かい部分まで全部クリアに見えるので、ぜひ注目してみてください。

アニメ事業に関わるさまざまな取り組みにも尽力されていますね。

作品の著作権・権利処理などを管理するライセンス事業や、デジタル化が進む中でフィルム時代の作品の保管・利活用を視野に入れたアーカイブプロジェクトなどにも携わりました。海外共同製作も経験しましたし、テレビシリーズだけでなく劇場版の「ルパン三世」「それいけ!アンパンマン」「名探偵コナン」「ルパン三世VS名探偵コナン」製作委員会へ参加するなど、アニメ全般の業務に関わりました。

「アニメのまち杉並」を象徴するミュージアムの館長として

杉並区にはアニメーション制作会社がたくさんありますが、その背景にはどんな理由があるのでしょうか?

アニメーション制作会社は全国に約800社あり、そのうち700社ほどが東京。その中でも約150社が存在する杉並区を含むJR中央線・西武線周辺エリアに集中しています。この発端はフィルム時代、先述したように原画・動画・セル画・背景などを各スタジオから回収する必要があったことも影響しており、これが都心なら、渋滞が多く、車で頻繁に移動するには効率が悪いですから。必然的に多くのクリエイターがこのエリアに住むようになり、どんどん拡大していったと考えられます。そんな中、杉並区は早い段階から地域で「アニメのまち」として盛り上げていく活動をしてきました。だからこそアニメのまちの土壌ができたのだと思います。

そこで20年前に誕生したのが杉並アニメーションミュージアムですね。

日本のアニメは、国策としてもっと力を入れて取り組んでも不思議ではないほど重要な文化になっています。その文化事業を杉並区が自治体として取り組んでいるのはすごいことです。館長就任を依頼していただいた際はとても光栄でしたし、アニメーションミュージアムがアニメ業界を応援する一つの情報発信基地になればと思っています。

アニメーションミュージアムの特徴や魅力は何ですか?

原作者のミュージアムや記念館は各地にありますが、アニメに関する映像や書籍など豊富な資料が閲覧できるライブラリーや上映シアターも併設されている、ここまでアニメーションに特化した施設は世界でも唯一無二と言えるでしょう。圧巻は、アニメの歴史を紹介する歴史年表コーナー。ほかにも、トレース(写し描き)やコマ撮りを体験できるアニメ制作コーナーや、声優のようにセリフを録音するアフレコブースもあり、展示を見るだけでなくさまざまな体験ができるのも魅力です。受付にある柱には、原作者をはじめとする著名なクリエイターのサインやイラストがたくさん描いてあるので、ぜひ見に来てください。

今後、どのようなアニメーションミュージアムを目指していきたいですか?

今は海外からのお客さんも多く、ツアー客に限らず個人でも、世界中からさまざまな方が訪れます。もちろん地域の親子連れや子どもたちも多く、子どもの居場所として親御さんたちが「子どもがここで遊んでいる分には安心できる」と言ってもらえるのは大変うれしいです。10年・20年先も皆さんに楽しんでもらえる、そんな施設を目指していきたい。まずは、平成20年までしかないアニメの歴史年表の続きをぜひつくりたいです。

最後に日本のアニメへの思い、未来に期待することをお願いします。

日本のアニメは、歴史的に海外に比べて低い予算でいかに映像化するか。という課題に向き合い、少ない作画枚数でも表現手法や撮影技術を工夫するなどの進化を遂げてきました。いわゆる「リミテッドアニメーション」と呼ばれる制作手法で日本独自に発展してきました。そして独創的なストーリーや絵コンテの繊細さ、作画のクオリティーの高さも改めてすごいなと思います。僕が会社に入った頃は年間50本ほどだったテレビアニメが今では年間300本以上。多くの作品がありますが、一つ一つの作品が大切にされ、その中から時代が変わっても愛される作品が生まれていくことを期待しています。

杉並アニメーションミュージアム20周年展

おかげさまで20周年

杉並アニメーションミュージアムの開館20周年を記念した展示を開催します。

  • 開催期間:7月22日(火曜日)~7月31日(木曜日)
  • 場所:杉並区役所1階ロビー、2階区民ギャラリー

詳細は以下リンク先をご確認ください。

「映画 それいけ!アンパンマン」展 開催中!

「映画 それいけ!アンパンマン」の最新作公開を記念し、これまで公開されてきた映画の貴重な制作資料・当時のポスターなどを展示しています。

  • 開催期間:7月21日(祝日)までの午前10時~午後6時(月曜日を除く。入館は5時30分まで。最終日は4時まで)
  • 場所:東京工芸大学 杉並アニメーションミュージアム(杉並区上荻3-29-5)

詳細は、以下リンク先をご覧ください。

全ページPDF

広報すぎなみ(令和7年度)6月15日号 第2406号

お問い合わせ先

電話番号:03-3312-2111

ファクス番号:03-3312-9911

ここまでが本文です。