「杉並区子ども読書推進計画(その1)」小学生は図書活動でどんなことをしているのか取材しました(令和4年9月15日)

 

ページ番号1077587  更新日 令和4年10月17日 印刷 

「すぎラボ」は杉並区で子育て中のママライター・パパライターによるコンテンツです。

突然ですが「杉並区子ども読書活動推進計画」ってご存じでしょうか。「子どもの読書活動の推進に関する法律」に基づいて、0歳から18歳までの子どもを対象に、読書活動を促進するための施策の方向性や取り組みを示したものだそうです。
これだけだとピンと来ないかもしれませんが、実際に杉並区の子どもたちは計画に則った支援を受けています。計画は多岐にわたり、家庭や地域での読書推進活動や学校、図書館での読書活動、読書に関する情報発信、それらの活動を推進するための協力体制づくりなどがあります。 
さまざまな取り組みの中で、今回は小学生の図書活動に関するお話をご紹介します。

学校図書館に常駐する学校司書ってどんな人

博士なみすけのイラスト

取材内容をお伝えする前に、まずは「杉並区子ども読書推進計画」が作られた経緯と、この計画によって配置された「学校司書」に関してご紹介します。杉並区の小学校における読書活動では、どうやら学校司書の先生が大活躍されているようです。

杉並区子ども読書活動推進計画が作られた経緯

平成15年に杉並区子ども読書活動推進計画が作られました。そのきっかけは、「子どもの読書活動の推進に関する法律」ができたことです。平成18年度からの第二次計画で、学校図書館の充実が重点項目となりました。当時は学校に司書業務を担う人がおらず、なかには情報が古くて調べものに使えないような本もあったとか。そこで活用できる図書館にするため、平成21年度から24年度にかけて各学校に1名ずつ学校司書が配置されたそうです。

学校司書のいない時代

筆者の子どもの頃は学校司書がいませんでした。図書の時間はあったのですが、図書室に行くと担任の先生が電気を点けて中に入り、思い思いに本を手に取り、チャイムが鳴るまで過ごすと言う時間でした。図書の時間以外に図書室に入った事もないし、担任の先生以外が図書館にいた記憶もありません。
しかし、筆者の小学生の子どもの話を聞いていると、どうやら筆者が子どもの頃の図書の時間と、現在の図書の時間はだいぶ違うようです。1番の違いは学校司書がいるかいないかのようですが、学校司書と聞いても具体的に何をしているのか、子どもの頃に経験のない筆者にはピンときません。

学校司書の役割ってなんだろう

そこで本題に入る前に、学校司書に関して確認してみましょう。

司書ってどんな人

文部科学省のホームページに、司書は以下のような人とあります。
司書は都道府県や市町村の公共図書館等で図書館資料の選択、発注及び受け入れから、分類、目録作成、貸出業務、読書案内などを行う専門的職員です。

学校司書ってどんな人

同じ文部科学省のホームページに、学校図書館には、学校図書館の専門的職務を掌る「司書教諭」を置くこととあります。なお杉並区の場合は、司書教諭とは別に、学校図書館の運営をサポートする学校司書を独自で採用しています。

以上の定義より、現在の小学校では、図書室に図書専門の学校司書が存在し、先生と生徒たちの図書活動をサポートしているとわかりました。
学校司書のイメージができたところで、取材内容をご紹介します。

取材でわかった小学生の図書活動

「杉並区子ども読書活動推進計画」に則って行われている、小学生の図書活動に関して、中央図書館 企画運営係係長の佐川さん、担当の早川さんに伺いました。

質問1

区立小学校における図書活動に関して、ルールとして決まっている取り組みはありますか。

回答1

統一的なルールはありません。それぞれの小学校で、図書活動のルールを決めています。
小学校では週に1回、図書の時間を取り入れています。学校図書館を利用する時間です。はじめは読書に慣れ親しむことを目的とするため、低学年では読書をする時間としています。調べ学習がしたくても、読めないことには始まりませんからね。
授業は、学校司書による読み聞かせや本の紹介を行った後に、図書の返却、貸出、自席で静かに読書をすると言った流れで行われます。
読むことに慣れてきた中学年以降は、調べ学習もよく行われています。国語や社会科などの授業内容に合わせて、学校図書館で調べ学習を行います。調べ学習では、学校司書と先生で協力しながら授業を進めていますよ。

本を読むなみすけ

質問2

児童に学校図書館から年間1人当たり50冊程度貸出しているという実態に驚きました。特に小学校に入ったばかりの低学年の児童はどのように読みたい本を選んでいるのでしょうか。

回答2

統一ルールがないため、学校により異なりますが、さまざまな形でサポートをしています。
例を挙げると、図書の時間に、学校司書が読み聞かせを行ったり、児童が興味を持ちそうな本を事前に集めておいたりと工夫しています。公共図書館と違い、学校司書は学校にいる児童の事を知っているので、児童が好きそうな本を紹介しやすいようです。読書が苦手な児童には個別に寄り添って本を紹介し、読んであげることもします。
より読書に親しめる環境づくりとして、生徒同士でおすすめ図書を紹介しあったり、読んだ感想を発表しあったりもしていますよ。
また、学校司書が常駐しているため、週に1回の図書の時間だけではなく、休み時間にも本を借りる事ができます。児童たちは借りた本を、朝読の時間や休み時間で読み進め、翌週にはまた1冊借りるという流れができています。こうして常に手元に読みたい本があるようにしているんですよ。

質問3

小学校では朝読書の時間と、学習センターとして「図書館を活用する時間」(通称「図書の時間」)があるようですが、それぞれどのような目的で、どのような事をしているのでしょうか。違いを教えてください。

回答3

朝読書の時間は1時間目の授業の前に10分程度本を読みます。児童の読む力の向上と読書の習慣化が目的です。気持ちを落ち着けて学習に取り組む効果もあります。
また、図書の時間は低学年の間は読書、中学年以降は調べ学習や探究学習をしています。繰り返しになりますが、低学年の間は読むことに慣れる事が目的です。
中学年以降は、学習に使うための時間です。後ほどご紹介しますが、タブレットと本を活用して調べ学習をします。学校司書は調べ学習でしっかり本が活用できるように、適宜本の入れ替えを行っています。新しく出版された本を購入し、古い情報の本は廃棄することで、新しい情報が調べられるようにしています。蔵書にない場合は、一時的に中央図書館や地域図書館から借りる事もしていますよ。

質問4

学校図書館を紙とデジタルの情報媒体を併用しながら、調べ学習・探究学習ができる場にしていくとありました。デジタルがあれば何でも調べられるので、紙媒体はいらないとつい考えてしまいがちですが、デジタルが推進される中で紙媒体に求められるもの、役割についてご意見をお聞かせください。

回答4

小学校では情報を調べて活用し、まとめる事を学びます。現在、タブレット端末が一人1台貸与されていますので、生徒たちは学校図書館でタブレットと紙媒体の両方を使って調べ学習を行います。
インターネットはとても便利ですが、情報が必ずしも正確とは限りませんし、児童にとってわかりにくいんです。そもそも児童向けの学習テーマに関するデジタル情報は少ないです。検索サイトでは、企業のPR情報が上位に出てきたり、誰でも書き込むことができるウィキペディアも出てきます。意見があたかも事実のように書かれている事もあります。児童にとっては、インターネットで自分の調べたい情報にたどり着くのはとても難しいのです。
一方で、百科事典や図鑑、年鑑など紙媒体は、何人もの専門家が関わって出版されており、情報が確かなものである事が保証されています。
また本は対象年齢を設定して構成されるため、子どもにとって読みやすく、理解しやすい内容になっています。紙媒体はデジタルよりも全体像を把握しやすく、ページ間を行き来しやすい、集中力を維持できたり、記憶にも留めやすいなど、じっくり読んだり、考えながら読んだりするのに適していると言う研究結果もあるんですよ。
しかし、本は情報が公開されるまでとても長い時間がかかります。そのため最新情報を入手する事はできません。時事問題や最新情報の収集にはインターネットが活躍します。また、デジタル資料には、画面を大きくしたり、音声を聞くことができるという利点もあります。
学校司書は、調べたいものに適したものを授業で活用し、雑多な情報の中から、正しい情報を見つけ出せるようサポートしています。

学校図書館を活用した教育で、情報を整理してまとめる力を養う事を目標にしている

本を読むなみすけナミー

杉並区では小学校に入学すると、すぐに図書館バッグが配布されたり、時間割に図書の時間が組まれていたりと、筆者は小学生になると読書が身近な環境になるなと感じていました。そんな中で「杉並区子ども読書活動推進計画」の存在を知ったのです。
今回はこの計画の存在を知らないパパママに、小学校で行われている授業や取り組みの意図をお伝えできたらと思い、取材を行いました。少しでも参考にして頂けたら幸いです。
最後に取材で1番印象に残ったお話をご紹介します。
「調べものにおいて、正解と考えられる情報を1つ見つけたからおしまいではなく、正解と考えられる情報を複数見つけて、どれが正しいのかを考える事が大事です。またそれが自分の意見なのか、他の人の意見なのか、事実なのか整理してまとめるようにとも教えていますよ。」
学校図書館で教えてくれているこの心構えは、将来にも繋がる大事なことだと感じました。それを目指してまずは、調べ学習につながる読書習慣が身につけられるよう、家庭でもサポートしていけたらいいですね。

すぎラボライター らくちゃんママ

 

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